第4回 『駄菓子』




 私は、おまけ付きの駄菓子が大好きである。古くは、キン消し、ビックリマン等から始まり、現在も珍しいものがあると、ついつい買ってしまったりする(財布の余裕に合わせてではあるが・・・)。

 最近は、昔の『駄菓子屋さん』の雰囲気を再現したお店も多く、懐かしい菓子たちが並ぶ店頭では、子供だけでなく、当時を思い出すように大人が駄菓子を買う姿も見られる。
 そんな懐かしの匂いを匂わす店内には、菓子だけでなく、簡単なおもちゃも売っている。ベーゴマ、メンコ等、私達ファミコン世代より前の物から、火薬で音の出るピストル、ユーホーダマ(エンバンダマ)やBB弾、銀玉。
 そして、『びっくり おもしろ 魔法刀』。うんうん懐かしい・・・・。
・・・・ん!?待てよ!?
 『びっくり おもしろ 魔法刀』!?
 見た感じは、あのコント等で使う、刃の部分が出たり入ったりする、プラスチック製のおもちゃのナイフだが、
 『びっくり おもしろ・・・・』って、そんな名前だったか!?さらに驚くべき事に、そのパッケージの絵柄は、どう見ても、小学校低学年の“男の子”が“もの凄い笑顔”(それはそれは“もの凄い笑顔”だった)で、そのナイフを振りかざし、力のままに振り降ろすというものだった。(その横には、“当然”友人らしき男児が描かれており、“彼”も、もちろん同じ“笑顔”だった。

 この御時世に、その絵柄とは、如何なものか?

 きっと、当時の製作者の方々は、
   『びっくり おもしろ 魔法刀』
の、“おもしろ”の部分を前面に押し出したかったのでしょうね。
 当時、この商品を売り出すにあたって、多分ですけど、売り出しに関する『企画会議』があったんだと思うんですね。

 社員A「えー、今回、話し合って頂く新商品は、こちらです。」
   〜全員拍手〜
   A 「この商品、一見普通のスルドイナイフ(プラスチック製)に見えますが、実はこのナイフ・・・。
      ・・・・B君、ちょっとこっちへ・・・。」
 社員B「はい。」
   〜社員B、社員Aの元へ。〜
   A 「B君、このナイフで僕を刺してみたまえ。」
   B 「エ!?そんな事できませんよ!!
      だって、これ凄くスルドイナイフじゃないですか!?(プラスチック製)」
   A 「良いから刺してみなさい。」
   B 「でっ、できませんよ!!そんな事!!」
   〜そこへ社長が口を開く〜
 社長 「A君!!悪ふざけはやめなさい!!そんなスルドイナイフで刺されたら、
      いくら君だって、ひとたまりも無いぞ!!(プラスチック製)」

   〜そこへお茶をくんでいたOL〜
  OL 「そうですAさん!!やめてください!!危険です!!そんな事!!
     早くそのスルドイナイフを(プラ製)をしまって下さい!!」
   A 「良いから!!B君!!さぁ、刺したまえ!!」
   B 「できません!!俺!!できません!!」
 社長 「A君!!もうよしなさい!!Bが泣いているじゃないか!!」
  OL 「そうです!!やめてください!!」
 社長 「そうだぞ!!OL君の言う通りだ!!やめなさい!!
      君は来春、ウチの娘と一緒になる男なんだからな!!」
  OL 「エ!?」(やっぱり恋してました・・・・彼女・・・・)
   B 「Aさん!!本当ですか!?」(彼も誰かにホの字だったようですね・・・。)
   A 「・・・・あぁ・・・・。」
   〜場内騒然〜

 社長 「今、君に死なれては、かなわんよ?そうだろ?
      ワーッハッハッハッハッ!!」
  OL 「Aさん・・・・。」(やっぱり・・・。)
   B 「Aさん・・・・。」(お前もかよ!?)
   〜OL、ナイフを持ったBに駆け寄る〜

   A 「・・・・すまない・・・B。」(そっちにかよ!!)
   〜OL、B、共にナイフをAに突き出す〜
   A 「はぅ!!」
 OL、B「・・・・。」
   〜そこへ社長の娘登場〜
    SE トビラの開く音『バタム!!』
   〜静まる場内〜

  娘 「・・・Aさん・・・?Aさん!!Aさん!!」
    〜娘の声が響く〜
 OL、B「・・・・・。」

   〜しばしの間〜
 社長 「・・・・A・・・・君・・・?」

   〜ゆっくり立ち上がるA〜
   A 「・・・・なんてね。(軽くウィンク)」
   〜キョトンとする娘〜
総勢2000人の社員「うぉぉぉぉぉぉぉ〜!!A!!A!!A!!A!!」
 OL、B「・・・・・・。」
 社長 「だっ、大丈夫なのかね!?A君!!
      そんなにスルドイナイフで刺されて!!(プラ製)」
   A 「えぇ、何でもありませんよ!!(何故か腕まくり)」
2000の社員「何故!?」
   A 「それはね?こういう事なんです!!」
   〜A、ナイフの刃をカシャカシャ出し入れする〜
2000の社員「うぉぉぉぉぉぉぉぉ〜!!」
 社長 「なるほど!!そういう事か!?」
   A 「はい!!」
 社長 「素晴らしい!!素晴らしいよ!!A君!!」
 OL、B「・・・・・・・。」
2000の社員「A!!A!!A!!A!!」

   〜社長の娘、Aに近づく〜
   A 「・・・・社長の娘さん・・・。」
   〜社長の娘、Aに平手打ち〜
   SE 平手打ちの音、エコー、『バシィィィィィ!!』
   〜静まる場内〜

   A 「・・・・・。」
  娘 「・・・・バカ!!・・・・大好き!!」
   〜娘、Aにしっかりと抱きつく〜
2000の社員「うぉぉぉぉぉぉぉぉ〜!!娘!!娘!!娘!!娘!!」
 社長 「うん!!うん!!うん!!(号泣)」
 OL、B「・・・・・・・・。」

   〜社長、ふとOL、Bに気付き一言〜

 社長 「・・・・あっ、君ら、クビね。」



なんて会議が行われたハズです!!ハズなんです!!そして、パッケージの絵だって・・・。

 その話は、又、後日、明らかにする事にしましょう。だから、皆、パッケージの絵を責めないで下さい。時代だったんです。そういう。当時はまさか、日本がこんな事になるなんて思っていなかったんです。
 バタフライナイフ?何それ?バターナイフじゃなくて?
とか皆言っていたんです。当時は。
 そして子供達だって解っていたんです。

   『ナイフで刺したら動物は、死んじゃうんだ』

 って事を。


 あれ?今回のコラム、あんまり笑えませんね?

                                            2002年2月  宮崎 健 inserted by FC2 system